脂漏性皮膚炎とは?治療や自宅でできる対処法について

「頭皮が何だかいつもムズムズ痒い…」「フケや黄色いカサブタみたいなものが…」そんな悩みを抱えている方。もしかしたら、それは「脂漏性皮膚炎」かもしれません。
近年増加傾向にある脂漏性皮膚炎は、頭皮や顔など皮脂の分泌が多い場所に現れる皮膚の炎症です。赤みや皮むけ、かゆみといった症状に加え、見た目にも影響するため、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
実は、この脂漏性皮膚炎、マラセチア菌というカビの一種が深く関わっていると考えられています。この菌は皮脂を栄養源として増殖し、炎症を引き起こすのです。 さらに、ストレスや乾燥、不規則な生活習慣なども症状を悪化させる要因となります。
この記事では、脂漏性皮膚炎の原因や症状、そして効果的な治療法・自宅でのケア方法を詳しく解説します。 多くの患者さんが悩んでいる、フケや赤み、かゆみへの対処法を、具体的な方法とともにご紹介します。
脂漏性皮膚炎の定義と主な症状
脂漏性皮膚炎は、頭皮や顔、胸、背中など、皮脂腺の多い場所にできる皮膚の炎症です。赤みや皮むけ、かゆみなどの症状が現れ、見た目にも気になるため、日常生活にも影響を及ぼすことがあります。乳幼児から大人まで、幅広い年齢層で発症するありふれた皮膚疾患ですが、適切なケアを行うことで症状をコントロールすることができます。
当院にも、脂漏性皮膚炎で悩んでいる患者さんが多く来院されます。中には、症状が悪化して強い炎症や痛みを伴うケースや、見た目へのコンプレックスから精神的に落ち込んでしまうケースもあります。
フケや鱗屑の特徴
脂漏性皮膚炎の代表的な症状の一つに、フケや鱗屑(りんせつ:皮膚表面の角質が剥がれ落ちたもの)があります。このフケや鱗屑は、皮脂の分泌が多い部分にできやすく、その見た目も部位によって様々です。
頭皮に生じた場合は、細かい粉のようなフケが大量に発生したり、黄色っぽくベタベタした大きなフケが付着したりします。まるで粉雪が舞っているように見えることもあれば、乾燥した田んぼの土のようにかさかさしていることもあります。
顔面に発生した場合は、鼻の周りや眉毛、額などに黄色っぽいかさぶたのような鱗屑が付着します。特に皮脂分泌の活発なTゾーンと呼ばれる額から鼻にかけての部分に症状が出やすい傾向があります。
かゆみや赤みの原因
脂漏性皮膚炎の赤みやかゆみは、マラセチア属真菌という皮膚に常在する真菌(カビ)の異常増殖が原因となることが多いです。このマラセチア属真菌は、皮脂を栄養源として増殖するため、皮脂分泌の多い部位で炎症を引き起こしやすくなります。炎症が起こると、皮膚が赤くなったり、かゆくなったりするのです。
かゆみの程度は個人差が大きく、少しむずがゆい程度の場合もあれば、我慢できないほど強い場合もあります。また、赤みもほんのりピンク色になる程度から、真っ赤になる場合まで様々です。中にはかゆみがひどく、夜も眠れないほどだと訴える患者さんもいらっしゃいます。このような場合は、適切な治療が必要になります。
他の皮膚疾患との違い
脂漏性皮膚炎は、アトピー性皮膚炎や乾癬といった他の皮膚疾患と症状が似ているため、自己判断でこれらの病気を区別することは難しく、専門家による診断が必要です。
例えば、アトピー性皮膚炎は脂漏性皮膚炎よりも皮膚の乾燥が強く、かゆみも激しい傾向があります。また、好発部位も異なり、顔、首、肘の内側、膝の裏側など、皮膚が薄く、摩擦を受けやすい場所に症状が現れやすいです。
また尋常性乾癬は、境界のはっきりした皮疹と銀白色の厚いフケが特徴的で、頭皮、肘、膝、腰などの部位に発症しやすい傾向があります。
脂漏性皮膚炎は皮脂の分泌が多い場所に好発しますが、アトピー性皮膚炎は乾燥しやすい場所に、乾癬は摩擦や刺激を受けやすい場所に好発する傾向がある、といった違いを理解しておくことが重要です。
これらの皮膚疾患は、症状や経過、発症部位、場合によっては顕微鏡検査や皮膚生検などの検査結果を総合的に判断することで鑑別していきます。皮膚に異常を感じたら、自己判断せずに皮膚科専門医を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしてください。
脂漏性皮膚炎の原因と発症メカニズム
脂漏性皮膚炎は、マラセチア属真菌というカビの一種が関係している、とすでに述べました。この章では、マラセチア属真菌と皮脂の関係、環境要因や遺伝的要因など、脂漏性皮膚炎の発症にどのように関わっているのか、より詳しく見ていきましょう。 原因を理解することは、不安を軽減し、日々のケアや治療への意欲を高めることにつながります。
マラセチア属菌と皮脂分泌の関係
健康な方の皮膚にも、マラセチア属真菌は常在菌として存在しています。普段は悪さをしないのですが、皮脂の分泌が多い場所や皮膚のバリア機能が低下している部分では、マラセチア属真菌が過剰に増殖することがあります。
マラセチア属真菌は皮脂を栄養源として増殖します。そのため、皮脂分泌が活発になる思春期や成人期に脂漏性皮膚炎を発症しやすくなります。皮脂の分泌が多い頭皮や顔のTゾーン(額、鼻、顎)、胸、背中などは、脂漏性皮膚炎が発生しやすい場所です。
脂漏性皮膚炎では生後2〜6ヶ月の皮脂分泌の多い特定の時期に好発する小児型と、主に壮年期以降に生じる成人型の2つがありますが、思春期の患者さんでニキビ治療と並行して脂漏性皮膚炎の治療を行うケースもよくあります。成人の方では、ストレスや生活習慣の乱れによって皮脂分泌が増加し、脂漏性皮膚炎が悪化してしまうケースがあります。
皮脂分泌の増加は、ホルモンバランスの変化、食生活、睡眠不足、ストレスなど、様々な要因が影響します。これらの要因を理解し、適切な生活習慣を心がけることが、脂漏性皮膚炎の予防と改善につながります。
環境要因と遺伝的要因の影響
脂漏性皮膚炎の発症には、マラセチア属真菌や皮脂の分泌以外にも、様々な環境要因や遺伝的要因が関わっていると考えられています。
環境要因としては、季節の変化(特に乾燥する冬)、ストレス、睡眠不足、食生活の乱れ、紫外線などが挙げられます。これらの要因は皮膚のバリア機能を低下させたり、免疫バランスを崩したりすることで、マラセチア属真菌の増殖を促進し、脂漏性皮膚炎の症状を悪化させる可能性があります。
例えば、冬は空気が乾燥し、皮膚のバリア機能が低下しやすいため、脂漏性皮膚炎が悪化しやすい傾向があります。また、ストレスは皮脂分泌を増加させるため、脂漏性皮膚炎の症状を悪化させる可能性があります。
遺伝的要因についても研究が進められており、家族に脂漏性皮膚炎の方がいる場合、発症リスクが高まるという報告があります。アトピー性皮膚炎や乾癬などの他の皮膚疾患との関連性も指摘されています。
発症しやすい部位について
脂漏性皮膚炎は皮脂腺の多い場所に発症しやすいという特徴があります。具体的には、頭皮、顔(特に眉毛の周辺、鼻の周り、おでこ)、耳の後ろ、胸、背中、わきの下、股などが挙げられます。これらの部位は皮脂の分泌が活発なため、マラセチア属真菌が増殖しやすく、炎症を起こしやすいのです。
赤ちゃんの場合(小児型)、頭皮や顔面、首の周りなどに発症することが多いです。カサカサの鱗屑を乾燥と勘違いしてしまい、良かれと思って顔や頭皮にワセリンなどの油脂の多い保湿を行うことによって悪化することもよく見受けられます。
また、脂漏性皮膚炎は症状が現れる部位によって、頭皮脂漏性皮膚炎、顔面脂漏性皮膚炎などと呼ばれます。症状が現れた部位だけでなく、その周囲の皮膚の状態も確認することで、より正確な診断が可能となります。例えば、頭皮脂漏性皮膚炎の場合、髪の生え際や耳の後ろなども注意深く観察します。
これらの部位に症状が現れた場合は、脂漏性皮膚炎の可能性があります。自己判断せずに、皮膚科専門医を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
脂漏性皮膚炎の治療とスキンケア方法
脂漏性皮膚炎は、マラセチア属真菌というカビの一種が関係する皮膚の炎症です。この炎症は、皮脂の分泌が多い頭皮や顔、胸、背中などに起こりやすく、かゆみや赤み、フケなどの症状が現れます。これらの症状は日常生活にも影響を及ぼすことがあり、適切な治療とスキンケアが重要です。
フケや鱗屑を乾燥と勘違いしてワセリンやスキンケアオイルなど油分の多いものを使ってしまうと、元々皮脂が過剰に分泌されているのにさらに皮脂腺が油脂の膜で覆われてしまい、症状が悪化することがよくあります。また同じく乾燥しているからと朝の洗顔をぬるま湯のみで行ったり、シャンプーを使わずお湯のみで洗髪したりする方も。それで症状が改善するならば良いのですが、基本的には分泌された皮脂はそのままにしておくと空気に触れて変性し、刺激となって脂漏性皮膚炎の悪化につながります。
そのため、脂漏性皮膚炎を疑ったらまず「よく泡立てた洗顔料やシャンプーでしっかり洗う」ことと、合わせて「軽めの(ローションタイプやスプレータイプなど)保湿を適切に行う」スキンケアが大事になってきます。過剰な保湿は避けるべきですが、だからといって何も保湿を行わないと皮膚が乾燥したと勘違いしてまた過剰に皮脂を分泌しようとしてしまいます。
薬物療法の選択肢
脂漏性皮膚炎の治療には、皮膚の炎症を抑える抗炎症や、マラセチア属真菌の増殖を抑える抗真菌剤などが用いられます。これらの薬剤は、クリーム、ローション、シャンプーなど様々な形状で提供されていますが、頭皮の場合はローションタイプやシャンプータイプが使いやすいでしょう。
抗真菌剤: マラセチア属真菌の増殖を抑える薬です。ケトコナゾールやミコナゾールなどを含む製品がよく使われます。頭皮の脂漏性皮膚炎には、抗真菌剤入りのシャンプーが効果的です。私のクリニックでは、患者さんの頭皮の状態に合わせて、適切な抗真菌剤入りのシャンプーを選んでいます。例えば、フケが多い方にはケトコナゾールシャンプーを、赤みが強い方にはミコナゾールシャンプーを勧めることがあります。
抗炎症剤: 皮膚の赤みや炎症を抑える薬で、主にステロイド外用薬が用いられます。ステロイド外用薬は効果が高い反面、長期使用による皮膚の萎縮や毛細血管拡張などの副作用のリスクもあるため、医師の指示に従って使用することが重要です。
その他の治療: 症状が重い場合や他の治療で効果が見られない場合は、補助的にビタミン剤を使用することもあります。またスキンケア用品もオイルコントロールを行えるようなクリニック専売を治療の補助の一つとして提案することも。症状に合わせて最適な治療法を選択することが大切です。
自宅でできる効果的なスキンケア
脂漏性皮膚炎の症状を悪化させないためには、毎日のスキンケアが非常に重要です。適切なスキンケアは皮膚のバリア機能を高め、炎症やかゆみを抑える効果が期待できます。
洗顔・洗髪: 刺激の少ない石鹸やシャンプーを選び、40度前後のお湯で指の腹を使って優しく泡だてて洗いましょう。ゴシゴシこすったり、熱いお湯を使用したりすると、皮膚への刺激となり症状を悪化させる可能性があります。洗顔料やシャンプーはすすぎ残しがないように十分洗い流してください。洗顔の際には、泡立てネットを使ってきめ細かい泡を作り、肌への摩擦を軽減することが大切です。また頭皮のシャンプーの場合は、抗真菌薬配合の薬用シャンプーを選ぶのも一つの方法です。
保湿: 洗顔・洗髪後は、保湿剤を塗布しましょう。保湿剤は皮膚の乾燥を防ぎバリア機能を維持するために不可欠ですが、脂漏性皮膚炎の場合はあまり油分が多すぎないものを選ぶことが大切です。セラミドやヒアルロン酸などの保湿成分が含まれた製品で、ローションやスプレーなど水基材のものがおすすめです。保湿剤を塗布する際は、優しくなじませるように塗布し、強くこすらないように注意しましょう。油分の多いクリームタイプは、脂漏性皮膚炎の症状を悪化させる可能性があります。乳液タイプやジェルタイプなど、油分の少ない保湿剤を選ぶことをおすすめします。
生活習慣の改善: バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけ、ストレスを溜めないようにしましょう。脂漏性皮膚炎は、生活習慣の乱れやストレスによって悪化することがあります。また、紫外線や乾燥、汗なども症状を悪化させる要因となるため注意が必要です。例えば、外出時には日焼け止めを使用し、帽子をかぶるなどして紫外線対策を行いましょう。また、エアコンの風が直接当たらないようにする、加湿器を使って室内の湿度を適切に保つなど、乾燥対策も重要です。
フケ対策におすすめのシャンプー
脂漏性皮膚炎によるフケが気になる場合は、抗真菌剤入りのシャンプーが効果的です。これらのシャンプーは、マラセチア属真菌の増殖を抑え、フケやかゆみを軽減します。ケトコナゾールシャンプーは週に2回程度、ミコナゾールシャンプーは毎日使用できます。硫化セレンシャンプーも週に2回程度の使用が推奨されています。
抗真菌剤入りのシャンプーはドラッグストア等で購入できますが、使用前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。また、シャンプーを使用してもフケの症状が改善しない場合は、他の原因が考えられるため、皮膚科を受診しましょう。どれが良いかわからないという方のために、当院では何種類かのシャンプーのサンプルをお渡しすることも多いです。
まとめ
脂漏性皮膚炎は、マラセチア菌と皮脂の増加が原因で起こる、赤みやかゆみ、フケなどを伴う皮膚の炎症です。顔や頭皮など皮脂の分泌が多い場所にできやすく、見た目や日常生活に影響を与えることも。
治療には、抗真菌剤や抗炎症剤を使った薬物療法が有効です。症状に合わせて、医師が適切な薬剤を選び、塗り薬やシャンプーなどを処方します。
自宅でのケアも大切です。刺激の少ない洗顔料やシャンプーで優しく洗い、保湿をしっかり行いましょう。生活習慣の改善も忘れずに、バランスの良い食事、睡眠、ストレス軽減を心がけてください。
フケが気になる場合は、抗真菌剤入りのシャンプーも効果的です。しかし、症状が改善しない、または悪化する場合は、すぐに皮膚科を受診しましょう。専門医による的確な診断と治療で、快適な生活を取り戻せるよう、積極的に相談することをおすすめします。
参考文献
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